活性化エネルギーと反応速度

 

 水素が酸素と化合して水が生成する反応は、大きなエネルギーを発生する発熱反応です。

 しかし実際には,水素の気体を空気中に放置しておいても、自然に発火して燃焼するということはありません。

 これは、常温では水素が酸素と化合して水が生成する反応は非常に遅いためです。

 その理由を説明すると、次のようになります。(ここでは、気体分子の反応を考えています。)

 化学反応が起こるとき、反応原系からエネルギーの高い遷移状態を経て生成系に移行すると考えられています。
この遷移状態と反応原系とのエネルギーの差を活性化エネルギーと言います。分子の運動エネルギーの分布は
マクスウェル−ボルツマン分布に従うことが知られています。温度が高くなるほど、反応が起こるために重要な
高いエネルギーをもつ分子の割合が増え、反応速度が増大します。


  発火の条件 の項もご参照ください。

  活性化エネルギー

A B
 もし、(A) のような状態であれば、ボールは簡単に下に転がっていきます。ところが、(B) のような状態であれば,
ボールを低いところに転がすためには,いったん高いところ(エネルギーの高い状態)に持ち上げなければなりません。

 同じように、化学反応がどんどん進むためには、分子のエネルギーを高くする必要があります。

 これは、反応が起きるためには、分子のエネルギーが高くなって、原子間の結合が切れやすくなるのと同時に、
分子同士が速い速度で激しく衝突する必要があるからです。


 マクスウェル−ボルツマン分布

分子はすべてが同じ速度(運動エネルギー)をもっているわけではありません。

下の図に示すように,平均的な速度(運動エネルギー)をもつ分子の割合が多く、大きなエネルギーを
もつ分子と小さなエネルギーしかもたない分子の割合は少ないのです。なお、お互いに衝突によって
エネルギーのやり取りをしているため、それぞれの分子のエネルギーは刻々と変動しています。



 温度が高くなると、気体分子の速度の平均値は大きくなり、速度の速い分子の数もぐんと増えます。

 反応が起こるために重要なエネルギーに富んだ粒子の割合が増え、反応が起きやすくなることになります。


  反応速度

  多くの化学反応において、次のようなアレニウスの式が成立することが認められています。

k = A exp (-Ea / RT)         (1)

  k :反応速度定数, A:頻度因子, Ea:活性化エネルギー, T:絶対温度, R:気体定数

 (1)式の意味するところををグラフで示すと、下のようになります。

 


 反応速度は、温度が上昇すると急激に速くなります。


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