分子軌道法計算(T) HMO法

1. ヒュッケル分子軌道法の概要

1.2.2 Hückel分子軌道の計算手順

簡単のために,エチレンの場合を例にとって,Hückel分子軌道の計算手順を示す。

ふたつの炭素原子のそれぞれの2p軌道をφ,φとすれば,分子軌道ψは

      ψ = Cφ+ Cφ                 (8)

と書ける。(LCAO近似)

     ∫φHφdτ = Hij                (9)

     ∫φφdτ  = Sij                (10)

とおいて,式(7)を書きなおすと

        C11 + 2CC12 + C22

    ε =  −−−−−−−−−−−−−−−−−−     (11) 

         C11 + 2CC12 + C22

となる。さらに,

(1) すべてのクーロン積分の値は等しい。        ∫φHφdτ = α

(2) 共鳴積分は,結合している原子間ではすべて等しく,結合していない原子間では零とする。

       ∫φHφdτ = β

(3) 重なり積分は自分自身との間を除いては零とする。   ∫φφdτ = 0 (i≠j)

(4) 基底原子軌道関数は規格化されているものとする。   ∫φdτ=1 とすると,

(11)式は,次のようになる。

        Cα + 2CCβ + Cα22

    ε =  −−−−−−−−−−−−−−         (12)

          C + C

この式を,C, Cについてそれぞれ偏微分し,極値を与える条件から,次の式が得られる。

   C(α-ε) + Cβ = 0                  (13)

   C(α-ε) + Cβ = 0                  (14)

 連立方程式(13),(14)が,C=C=0 以外に根を持つためには,

   |α −ε   β |
 |        |= 0           (15)
 | β   α−ε|

                            が成立する必要がある。いま,すべての要素をβで割って

    (α−ε)/β=λ                    (16) 

とおけば,

|λ  1|
|    |= 0             (17)
|1  λ|

が得られる。これを展開して解くと,λ = ±1 を得る。各々の根を式(16)に代入すると,

      ε = α + β                   (18)

      ε = α − β                   (19)

が得られる。ε, εを式(13),(14)に代入し,規格化条件と併せて各分子軌道の係数が求められ,

      ψ = 1/ 2(φ+φ)                (20)

      ψ = 1/ 2(φ−φ)                (21)

が得られる。

【演習】 アリルの場合 (ψ=Cφ+Cφ+Cφ)と ブタジエンの場合(ψ=Cφ+Cφ+Cφ+Cφ)について, ヒュッケル分子軌道を計算してみよ。

 分数関数の微分の公式から

  ∂ε   (2Cα+2Cβ)(C+C) - {α(C+C)+2CCβ}・2C

  −− = −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  ∂C             (C + C)

       2Cα+2Cβ - ε・2C     2{C(α-ε)+Cβ}

     =−−−−−−−−−−− =−−−−−−−−−−

          C + C            C + C

  同様にして,Cについて偏微分し極値を与える条件から式(14)が得られる。


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