HMO法計算は,原子間距離,振動数,双極子モーメント,スピン密度,生成エンタルピー,励起エネルギー,酸化還元電位,pK値,反応性の予測などに適用されている。
同じ系列の化合物で,遷移エネルギーが系統的に変化するような場合には,HMO法による計算結果が実測値とかなりよく対応することが知られている。
次の表2は,鎖状共役ポリエンおよびアセン(カタ縮合多環芳香族炭化水素)のπ−π*遷移に よる吸収の極大吸収波長を波数に換算したものである。HMO法によるHOMO-LUMO間の遷移エネルギーの 計算値と比較して相関を求めて見よ。
炭化水素 | λmax(nm) | ν(cm-1) | LUMO | HOMO | ΔE(β) |
---|---|---|---|---|---|
エチレン | 162.5 |
61,500 |
|||
ブタジエン | 217.0 |
46,080 |
|||
ヘキサトリエン | 268.0 |
37,300 |
|||
オクタテトラエン | 304.0 |
32,900 |
|||
ナフタレン | 288.5 |
34,700 |
|||
アントラセン | 378.5 |
26,400 |
|||
ナフタセン | 471.0 |
21,200 |
|||
ペンタセン | 575.5 |
17,400 |
これらの良好な相関関係は,フェン系化合物やペリ縮環化合物についても見られる。