分子軌道法計算(T) HMO法

2. ヒュッケル分子軌道法プログラムの応用例

 HMO法計算は,原子間距離,振動数,双極子モーメント,スピン密度,生成エンタルピー,励起エネルギー,酸化還元電位,pK値,反応性の予測などに適用されている。

2.2. 炭化水素のHückel分子軌道と光吸収

 同じ系列の化合物で,遷移エネルギーが系統的に変化するような場合には,HMO法による計算結果が実測値とかなりよく対応することが知られている。

[演習1]

 次の表2は,鎖状共役ポリエンおよびアセン(カタ縮合多環芳香族炭化水素)のπ−π遷移に よる吸収の極大吸収波長を波数に換算したものである。HMO法によるHOMO-LUMO間の遷移エネルギーの 計算値と比較して相関を求めて見よ。

 表2 遷移エネルギーの実測値とHMO法による計算値

炭化水素 λmax(nm) ν(cm-1) LUMO HOMO ΔE(β)
エチレン
162.5
61,500
     
ブタジエン
217.0
46,080
     
ヘキサトリエン
268.0
37,300
     
オクタテトラエン
304.0
32,900
     
ナフタレン
288.5
34,700
     
アントラセン
378.5
26,400
     
ナフタセン
471.0
21,200
     
ペンタセン
575.5
17,400
     

 これらの良好な相関関係は,フェン系化合物やペリ縮環化合物についても見られる。


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