炎色反応は実験室内だけでなく身近でも見られます。たとえば、鍋を加熱したままにしていて味噌汁などが吹きこぼれると、青かったガスバーナーの炎が鮮やかなオレンジ色になります。これはナトリウム(Na)の炎色反応によるものです。
ここでは、身の回りの品を使って台所でもできる手軽な炎色反応の実験をいくつかご紹介します。なお、一般に花火に用いられるストロンチウム(Sr)とバリウム(Ba)は入手しにくいため、代わりにカルシウム(Ca)とホウ素(B)を用います。
色 金 属 赤 ストロンチウム (カルシウム) 青 銅 緑 バリウム (ホウ素) 黄 ナトリウム
器 具 | 白の磁器製の深めの小皿 (ちょっと高めのプリンに付いてくる白の磁器製の容器や惣菜を区分けするためのアルミカップでも可) |
平たい皿 | |
試 薬 | メタノール (燃料用アルコールでも可) 綺麗な水 |
1. 鍋敷きなどの上に平たい皿を置き、さらにその上に深めの小皿を置きます。 2. 深めの小皿にメタノール約15mlを入れます。 3. それぞれの金属化合物をできるだけ少量の水に溶かした溶液を約5ml加え、よくかき混ぜます。 4. マッチなどで点火し、照明を消します。 |
この方法で、美しい炎色を2分間ほど観察することができます。
再度行う場合は、火が消えた後しばらく待って容器が少し冷めてから、アルコールを追加し再度よくかき混ぜてください。
※ 燃えやすいものが近くにないことを確認してから実験を行ってください。
※ 毒劇物は使用しませんが、使い終わった容器はあとでよく洗ってください。
※ まわりが明るいと炎の色が見えにくいので、夜またはカーテンを閉め切った部屋などの暗い場所で実験をしてください。
※ 炎色反応は非常に鋭敏なので、容器やかき混ぜ棒は金属塩ごとにそれぞれ別なものを使用してください。また、人の手には汗の中の塩分(NaCl)が付着しているので、容器の内側には手を触れないように注意してください。
◇ メタノールは薬局、雑貨店で入手できます。(500ml で400〜500円くらい) エタノールは炭素数が多いため炎に色がつくので、できるだけメタノールを使用してください。「燃料用アルコール」として売られているものは、メタノールとエタノールの混合物です。
試 薬 | 湿気とり用乾燥剤容器の下部に溜まった液 (CaCl2・10H2O) (白い粒を取り出して水に溶かしてもかまいません。) |
※ 塩化カルシウムは、押し花用乾燥剤や冬季の路面凍結防止剤などにも使われています。
試 薬 | 水約5mlに食塩小さじ1/3程度を加えて溶かした溶液 |
◇ あるいは、少量の味噌を湯で溶いてペーパータオルやコーヒー用ろ紙で漉した溶液。その他、汗やせっけん液、重曹などを溶かした液なども試してみてください。
試 薬 | ぬるま湯約5mlにホウ酸約0.2gを加え、できるだけ溶かした溶液 |
◇ ホウ酸は薬局などで入手できます。
試 薬 | ぬるま湯約5mlにミョウバン約0.3gを加え、できるだけ溶かした溶液 |
◇ ミョウバンは薬局などで入手できます。
カリウムは黒の粒胡椒に多く含まれているとの情報もあります。
※ 燃えやすいものが近くにないことを確認してから実験を行ってください。
※ まわりが明るいと炎の色が見えにくいので、夜またはカーテンを閉め切った部屋などの暗い場所で実験をしてください。
器 具 | 銅の電線 |
ガスコンロ | |
試 薬 | ラップフィルム(ポリ塩化ビニリデン製) |
1. 不要の電線を5cmほど切り取り、1cm程度残して被覆をはがします。 2. 反対側の端をペンチなどで持って、銅線の部分をガスコンロの青い炎に入れてよく焼きます。 3. 冷めてから、手で直接触れないようにして、3×3cm程度に切ったラップフィルムを銅線の部分に巻きつけます。 4. ラップフィルムを巻いた銅線の部分をガスコンロの青い炎に入れます。(有毒ガスが発生する恐れがあるので、換気扇を回すか換気の良い場所で行ってください。) ラップフィルムが燃えた後しばらく加熱しつづけると、青緑色の銅の炎色反応が見られます。 |
これは有機化合物中の塩素を検出する分析法で、Beilstein Testと呼ばれます。含まれている塩素が銅と反応して揮発しやすい塩化銅となり炎色反応を示します。
塩素原子はきわめて活性で、大気中のオゾンの分解やダイオキシンの発生に関与しています。この方法を利用して、身の回りのいろいろなプラスチックに塩素が含まれているかどうか調べてみませんか。
※ ポリ塩化ビニリデン製でないラップフィルムもあるので、箱に書かれた成分表示を見て確認してください。
試 薬 | 青い折り紙 |
1. 青い折り紙を大きな灰皿などの上に置き、点火します。
2. 青緑色の銅の炎色反応が見られます。
染料や顔料の示す色と炎色反応による色は直接的な関係ありません。青い折り紙が青色の炎色反応を示すのは、顔料としてフタシロアニンブルー(銅フタシロアニン)が含まれているものがあるためです。
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