スペクトルの中でたくさんのスペクトルが集合している部分をバンドスペクトルといいます。この光の特徴は、原子やイオン、さらには固体から出るのではなく気体分子、特に二原子分子から放出されるという点にあります。この光は、物質を原子やイオンにまでバラバラにする必要がないので、線スペクトルを示す光に比べて低い温度で放出されます。つまり、2500℃あたりの温度で発色させるには好都合であり、花火はもちろん炎色反応で見られる鮮やかな色のかなりの部分はこのバンドスペクトルを示すと考えられます。
原子は線スペクトルなのに,なぜ分子の場合はバンドスペクトルになるの?
分子には、原子にはない振動、回転運動をします。つまり、分子は原子と異なり立体的に複雑な形をしているので、エネルギー交換の時に分子内で振動や回転運動をします。
よく見るとバンドスペクトルはたくさんの線スペクトルの集まりになっているように見えます。実際、線スペクトル同様バンドスペクトルの場合も、電子の低エネルギー状態への遷移が基本となって起きます。
しかし原子と異なり、分子は外部からエネルギーを受け取り、分子内電子が高いエネルギー状態に励起されるときにも、そのエネルギーの一部はこのような分子運動のエネルギーに割かれてしまうし、再度励起電子が低エネルギー状態に遷移するときにも、放出されるべき光エネルギーの一部分が分子内運動エネルギーの方にまわってしまいます。
そのために、それぞれのエネルギー状態が原子の場合ほどきっちり決まらなくなり、電子のエネルギー変化も極わずかずつ異なったものになります。そこで放出される光の方もわずかずつ異なった波長を持つようになり、バンド状スペクトルができるのです。
炎色反応 | 身の回りの化学
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