線香の燃焼のしくみ

 線香の火は、ろうそくやバーナーの火とは違って炎を出さずに燃えます。このような燃焼は無炎燃焼(むえんねんしょう)、あるいは燻焼(くんしょう)ともよばれます。

 線香のほかにも木材、紙類、さらにタバコも無炎燃焼します。(条件によっては有炎燃焼をおこなうことができます。)

 これらの燃焼は固体表面でおこなわれ、燃焼部分は赤熱程度(700〜800℃程度)に保たれています。
 これらの物質は400℃内外で熱分解をおこし、その分解生成物が可燃性なので、外部の空気と接触して酸化反応が起こります。
 その発熱で、表面温度が保たれています。したがって、燃焼は物体表面に垂直に進行してゆきます。

 この場合の酸化反応は、燃焼表面のごく近くで行われていて、その発熱がただちに燃焼表面につたえられています。

 木片や紙片で無炎燃焼をさせようとしても、一時的に火がついても、あとが続かず、たちぎえてしまうことがあります。


   無炎燃焼と有炎燃焼


ろうそくの炎から線香に火を移そうとしたところ、線香が炎をあげて燃え始める(有炎燃焼)ので、風を送って炎を消し、無炎燃焼の状態に移そうとするのは、よく見かける光景です。


 反対に、無炎燃焼の状態から有炎燃焼に移ることもあります。紙屑やたき火で無炎状態になったとき、息を吹いたりして風を送り、ちょっとやめると、ぱっと炎があがり有炎状態になります。

 このような経験は、誰にもありますが、無炎燃焼と有炎燃焼とがどのような場合にお互いに遷移するのか説明することは、難しいのです。

線香・木片・紙片などの有炎燃焼の火炎は、固体表面から放出される分解ガスの拡散火炎です。

 固体表面は、火炎からの伝熱によって加熱されても、数百度の分解温度を保ってガス発生器となっているだけです。一方、火炎の温度は千数百度に達するので、固体表面との間に距離があっても、必要な加熱ができるのです。

 


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